方角にも意味がある

 お隣のトメさんがやってきました。

「ナオじいちゃん、聞いてくれよ。うちの山の神が最近変なのに凝ってしまって、困っているんだ。」

「風水だかなんだか知らないけど、方角がどうのこうのとうるさいんだ。」

「この前なんか、仕事に出掛けようとすると、『今日は東の方角は悪いから、反対の西の方から行って』と云うんだ。」

「そうすれば良いじゃないか。」

「でも、西の方から行くとだいぶ大回りになって、時間が掛かってしまうんだ。」

「うん。人間には心がある、心はころころと変わるからこころと云う、ころころ変わるから大事なことを決めれない、迷ってしまうんだな。」

「そこで、自分で決めれないから他人に決めてもらおうと、占いや風水などが流行るんだ。」

「でも、占いや風水はあながちでたらめな事を言っているとも限らないな。」

「風水で云う鬼門は北東の方角だが、これは親神様の十全の守護から云うと、切る働きだ。切るというのはたいていの場合良い事ではない。仕事が切れる、縁が切れる、命が切れる。だから北東は鬼門と云えるかもしれないな。」

「親神様のお働きと方角とは対になっている。」

「北はくにとこたちのみこと様で、人間身の内の眼うるおい、世界では水の守護の理。

 南はをもたりのみこと様で、人間身の内のぬくみ、世界では火の守護の理。

 南東はくにさづちのみこと様で、人間身の内の女一の道具、皮つなぎ、世界では万つなぎの守護の理。

 北西は月よみのみこと様で、人間身の内の男一の道具、骨つっぱり、世界では万つっぱりの守護の理。

 東はくもよみのみことさまで、人間身の内の飲み食い出入り、世界では水気上げ下げの守護の理。

 南西はかしこねのみこと様で、人間身の内の息吹き分け、世界では風の守護の理。

 北東はたいしよく天のみこと様で、出産の時、親と子の胎縁を切り、出直の時、息を引きとる世話、世界では切ること一切の守護の理。

 西はをふとのべのみこと様で、出産の時、親の胎内から子を引き出す世話、世界では引き出し一切の守護の理。」

「このように方角にはそれぞれの働きがあるとわしは思っておる。」

「例えば、東の方角は飲み食い出入りの働きだ、人間の胃腸の働きは朝方からだんだんと良くなってきて、夕方になると落ちてくるそうだ。東はお日様の出る方角だから、胃腸の働きと関係があるのは納得できる。」

「また、西の方角は引き出しの働きだ。寝る子は育つと云うように、夜寝ている間に身体は成長するそうだ。西はお日様の沈む方角で夜を意味する。」(つづく)