地と天の話

「トメさん、おつとめの地歌、みかぐら歌の第二節に『じとてんとをかたどりて ふうふをこしらえきたるでな』と云う文句があるが、意味が分かるかな?」

「ぜんぜんわかりやせん」

「分からなきゃ教えてやろう」

「夫婦と云うのは、夫と妻で夫婦だな」

「かたどりてと云うのは、型取りてで似せて、と云う事じゃ」

「神様は大地に似せて妻を創造った」

「また、天に似せて夫を創造った」

「大地は下にある。ほとんどの物が大地の上に立っている。大地の中にある物もあるがな」

「植物も動物も山も森も海も湖も、大地(地球)の上にある」

「人間も建物も大地の上に立っている」

「つまり、大地は全ての物を引き受けているのじゃよ」

「だから、妻は、家庭であったら母親は、すべての物が母親に来ると思わなきゃならん」

「舅、姑さんの愚痴を聞かなきゃならんし、子供を育てなきゃならんし、隣近所の付き合いをしなけりゃならん」

「良いことばかり有るのじゃない、悪い物も汚い物も危険な物もある」

「それを何でも引き受けて、良い物と悪い物を分別して、良い物だけを返す」

「大地が栄養分を植物に与えるように」

「妻や母親は、愚痴を聞いたり、子供の他愛もない話を聞いたり、お隣さんの世間話を聞いたりしても、いつも笑顔で優しい言葉をかけなければならない」

「さて、天は空ともいう。空はからっぽだ」

「空は雲がない事を晴天と云う」

「天気が荒れるのは、雲があり風が吹くから、嵐になったり水害が起こる」

「冬は大雪や吹雪になる」

「夫は父親は、曇りの無い晴天の心でなければならない」

「わしがいつも言っている『晴天の心』だな」

「をしい、ほしいのほこりもなく、にくい、かわいのへだてもない。人をうらむ心も出ず、いつも心陽気であり、腹を立てるような事もない。うそについしょうこれきらい、よくに、こうまん大きらいという心でなければならん」

「夫は時には妻の愚痴を聞いてあげる事だ」

「天が海の水を吸い上げ雲となって雨を降らせるように」

「夫婦は五分五分である。五分五分とは互いに立て合うという事じゃ」

「へえ!分かりやした」