修養科

 囲碁仲間の源さんが久しぶりにやって来ました。

「ナオじいさん、こんにちは」

「源さんかい、久しぶりだね」

「最近碁会所に行ってないから、一年振りぐらいかね」

「ナオじいさんはお元気そうだね」

「身体は元気なんだけど、膝が痛くて出掛けるのが少し億劫になってきた」

「ところで何か用事があって来たのかい?」

「実は息子の事でお願いにやって来たんだ」

「小さい頃によく碁会所に連れて来てたな、あの息子かい」

「そうなんだ、もう三十だよ。世間では仕事に就いて結婚もして子供も出来ている、そんな年だよ」

「でも、今だにフラフラしてどうしようもないんだ。仕事は一年ももたないし、遊び歩いて家には寄り付かないし、しまいには酔っぱらって喧嘩して親に面倒掛ける始末だ」

「若い時はみんなそんなもんだよ。でもね身体は健康なんだろ」

「それが、そうでもないんだ。俺には何も言わないけど、家内には相談しているらしい。何でも甲状腺の病気らしいんだ」

「仕事が長続きしないのも病気のせいかもしれないと、家内は言うんだけどね」

「甲状腺の病気とは厄介だね。これは女性に多い病気だ」

「甲状腺は甲状腺ホルモンを作る所で、甲状腺ホルモンは新陳代謝を活発にする働きがある。このホルモンは多くても少なくてもダメだ。バランスが良くないとダメなんだな」

「病院には通っているそうだが、なかなか良くならないんだ。どうしたら良いかね」

「そうだな。修養科へ行ったらどうかな」

「天理教には修養科と云う学校のようなところがある。三ヶ月間心と体をリフレッシュさせる所だ。三ヶ月と云えば長いように思うかもしれないが、息子さんは今仕事をしていないんだろ」

「今まで聞いたことのないような神様の話を聞いて、身体はひのきしんと云って何も求めず、ただひたすら身体を動かして掃除やいろいろなことをする」

「修養科と云う所は、助かりに行く所でもあり、心に力を付けて他人を助けたいと思うようになる所でもある」

「そんな良い所ならぜひ息子をやりたい、でもうちは天理教じゃないけど入れるのかな」

「大丈夫、私に任せなさい」