九つの道具

 ナオじいちゃんと隣のトメさんが、将棋を指しながら話をしています。

「トメさん、人間には九つの道具があるのを知っているかな」

「九つですか?なんだろう!」

「顔に四つあるな、目と耳と鼻と口の四つだな」

「手が二つで足が二つ、合計で八つ」

「最後の一つは何ですか?」

「お前さんの好きなものだよ」

「好きなもの?好きなものと云えば、飲む打つ買う」

「夜使うものじゃよ、男女一の道具」

「これが人間の身体の九つの道具じゃ」

「九つの道具は、男女一の道具以外は二つづつある」

「ちょっと待って下さい。口は一つだ思うんですがね」

「いや、二つある。入口と出口じゃ。顔にある口は入口、下の口肛門は出口」

「わかりやした」

「では、何故二つあるのか?」

「目は善いことか悪いことかを見分ける為、鼻は善いことか悪いことかを嗅ぎ分ける為」

「耳は善いことか悪いことかを聞き分ける為、口は善いことか悪いことかを噛み分ける為」

「右手と左手は、善いことか悪いことかを使い分ける為」

「右足と左足は、善いことか悪いことかを踏み分ける為」

「ただし、一つしかない男女一の道具は、使い分けてはいかん」

「トメさん、今夜はA子さんの所へ行って・・・・、明日はB子さんの所へ行って・・・・、などと使い分けてはいないだろうな?」

「いえ、あっしは女房一筋で、浮気はしたことがありません」

「そうか、ならよろしい」

「おさづけを取り次ぐ時は、二つある道具でも取り次ぎ方が違ってくる」

「手と足は左右両方に取り次ぐ時は、片方づつ取り次ぐ。何故なら、二つあっても左右別々に使うからだ」

「でも、目と耳と鼻は、左右両方に取り次ぐ時は、左右一緒に取り次ぐ。それは目も耳も鼻も左右一緒に使うからだ」

「親神様は、我々人間に陽気ぐらしをさせたいと思召されて、九つの道具を貸して下さっている。だから、我々は陽気ぐらしをするように、目耳鼻口両手両足一の道具を使わせて貰わなければならない」

「そのためにおつとめを教えて下さった」

「月次祭のおつとめに使う鳴物の九つの道具は、人間の身体の九つの道具を表していると聞かしてもらう」

「次回は、鳴物の九つの道具と、身体の九つの道具について話しよう」