育てるのか育つのか

 久しぶりに孫娘の直子さんがやって来ました。

「ナオじいちゃん、教えるのって難しいね!」

「どうしたんだ、直子」

「今、クラスに問題児が一人居てね、ミノル君と言うんだけと、なかなか授業に付いていけないの」

「一人だけ置いていくわけにもいかないし、かと言ってミノル君が分かるまでやると他の子は先へ進めないし」

「どうしたら良いか分からなくなってしまったの」

「直子は優しいからな。それで他の学科もそうなのか?」

「他は普通らしいんだけど、それに頭の悪い子ではないから、何故私の受け持つ数学だけやる気がないのか分からないのよ」

「誰でも興味のないものには気が進まないものじゃよ」

「教えることより興味を持たせるようにしたらどうかな」

「直子も数学の先生になるとは思っていなかったな。何か数学を勉強しようと思ったきっかけがあったんじゃろ?」

「そうね、私が数学を勉強したいと思ったきっかけは、お父さんからもらった一冊の本かな」

「その本には、四色問題が書かれてあったの。ナオじいちゃんも知っていると思うけど、地図で隣り合った国を別の色で塗り分けるには四色の色があれば良い、と云う事を証明する問題よ」

「私は塗り絵が好きだったから、それが不思議でならなかったの。それで数学を勉強してみようかなと思ったの」

「ミノル君にも直子の四色問題のようなものと出会えたら、数学を好きになって勉強するようになるかも知れないな」

「勉強はさせるものじゃない、勉強するように仕向けるのが教師の役目だとワシは思う」

「私も最近それが分かるようになってきたわ。ある先生が言ってたの、教育とは馬を水飲み場に連れて行って水を飲ませるようなものだと。水を飲むかどうかは本人次第、如何に水の飲みやすい環境を作るかだと」

「そうじゃな、人を育てるのも同じゃと思う」

「いくら良い子に育てようと思っても、悪の道に行く子もいるし、良い学校に入り良い会社に入るように育てても、落ちこぼれになる子もいる」

「人間は育てるものと思っているが、育てるのではなく育つものなんだと思うのじゃ」

「そうだね、分かった。ミノル君の興味を持つ物への出会いを一緒に探すことにするわ」