その三 ため口の洗礼

 朝礼の時、HK君は私の肩をたたいて、「あべっち、よっ!」と言って通り過ぎて行く。HT君は、私にカップのコーヒー(後には教科書の入ったリュックになったが)を持たせてハッピの帯を結ぶ。修養科生は常にハッピを着なければならないという規則があります。ただし夏の間は、授業とひのきしん、食事の時にはハッピを着なくても良いのですが。

 二人とも今どきの若者で、髪を染めてヤンキーぽいが、根は素直な子達で私になついてくれました。

 HK君は、一ヶ月目の終わりころ、おじいちゃんの身上のお願いだと言って神殿でお願いづとめをするようになりました。そうしたら「おじいちゃん、手術をしなければならないのに、手術をしなくても良くなった」と、嬉しそうに私に話してくれました。

 時々身上になり授業を休みます。ある時はおなかが痛いと言ったり、またある時は熱があると言ったり、その時は詰所を訪れておさづけを取り次がせて頂くと、次の日は元気になって授業に出てきます。教養掛の先生が厳しそうな方だったので、何となく原因が分かりました。

 HT君は、授業中はスマホを見ています。注意すると、今度はハッピの帯で遊んでいます。何かをやっていないと気が済まないようです。それで、本人曰くちゃんと聞いていると言います。

 でも、ひのきしんは水を得た魚のように生き生きとして頑張っています。また、我慢強く、風邪で熱がある時でも休まずに出て来ます。大事なおさづけを戴く日に風邪を引いたので、また日を改めて戴く事が出来るのだと話しましたが、風邪薬を飲んで出て来てくれました。