自分のもの

「お母さん、どうしよう」

「どうしたの?」

「大事な大事なペンダントが無くなったの」

 そのペンダントは、ゆめちゃんが一年生の時にお誕生日にもらった、それはそれは大切なペンダントなのです。

「それは大変ね」

「ところで、そのペンダントはいつ無くなったの」

「日曜日にハナちゃんのところへ遊びに行った時はあったのよ。でも、今日宝箱を見たら無いの」

 ゆめちゃんは、大事なものはみんな宝箱に入れているのです。

「ハナちゃんのところから帰ったら、箱にちゃんとしまったの?」

「それがおぼえてないの」

「ハナちゃんのところでは遊びに夢中になって、それはそれは楽しかったから」

「ハナちゃんのところに忘れてきたとか、途中で落としたとか、思い出せない?」

「そういえば、ハナちゃんがあのペンダントをほしがっていたわ。ハナちゃんが隠したのよ、きっとそうだわ」

「ゆめちゃん、お友達をうたがうものじゃありません。こういう話があるのよ」

「むかし、教祖のお弟子さんで、かみひょうしろうさんと云う方がおられたの。その方の子供さんがタコを飛ばしていたら、糸がプツンと切れてタコは遠くへ飛んで行ってしまったの。子供さんは大事なタコを無くしたので泣きじゃくっていたら、かみひょうしろうさんは優しくこう言ったの。『そのタコが本当にお前のものなら必ず帰ってくる』と。その通りに後でタコは拾った人が持ってきてくれたそうよ」

「ゆめちゃん、ペンダントもタコも、みんな親神様からの借りものなの。このからだもそう、自分のものは一つも無いの」

「すべて、自分の心にふさわしいものを親神様が貸して下さっているの。だから、無くなっても自分にふさわしいものなら帰ってくるし、ふさわしくなければ帰ってこないのよ」

 その時でした、電話のベルが鳴ったのは。

「ゆめちゃん、ハナちゃんのお母さんから電話で、ゆめちゃんのペンダントが座布団の下にあったそうよ」

 そのペンダントはゆめちゃんにふさわしいものだったようです。