まごころの贈り物

「ねえ、お母さん、聞いて!」

「どうしたの、ゆめちゃん」

「ハナちゃんが、私の持っていたディズニーのシャーペンをうらやましがっていたので、あげようとしたらいらないって言うの」

 ハナちゃんとは、ゆめちゃんの同級生です。

「ゆめちゃん、あのシャープペンシルは大事にしていたのに、どうしてあげようと思ったの?」

「だって同じので新しいものをもらったんだもの」

「それで、あげようとしたのはどっちなの」

「古いほう」

「ゆめちゃん、教祖のお話にこんな話があるのよ」

『ある年の暮に、一人の信者が立派な重箱にきれいな小餅を入れて、「これを教祖にお上げして下さい。」と言って持って来たので、こかんは、早速それを教祖のお目にかけた。すると、教祖は、いつになく、「ああ、そうかえ。」と、仰せられただけで、一向御満足の様子はなかった。それから二、三日して、又、一人の信者がやって来た。そして、粗末な風呂敷包みを出して、「これを、教祖にお上げして頂きとうございます。」と言って渡した。中には、竹の皮にほんの少しばかりのあん餅が入っていた。例によって、こかんが教祖のお目にかけると、教祖は、「直ぐに、親神様にお供えしておくれ。」と、非常に御満足の体であらせられた。これは、後になって分かったのであるが、先の人は相当な家の人で、正月の餅をついて余ったので、とにかくお屋敷にお上げしようと言うて持参したのであった。後の人は、貧しい家の人であったが、やっとのことで正月の餅をつくことが出来たので、「これも、親神様のお蔭だ。何はおいてもお初を。」というので、そのつき立てのところを取って、持って来たのであった。教祖には、二人の人の心が、それぞれちゃんとお分かりになっていたのである。教祖は、その品物よりも、その人の真心をお喜び下さるのが常であった。そして、中に高慢心で持って来たようなものがあると、側の者にすすめられて、たといそれをお召し上がりになっても、「要らんのに無理に食べた時のように、一寸も味がない。」と、仰せられた。』

「ゆめちゃん、ほしい人にもらってもらうのは良い事ね、でも二本もあるから一本はあげても良いと思うのは真心がこもっているとは思えないわね」

「わかった、新しい方をハナちゃんに、あなたに使ってもらいたいの、と言って渡すわ」