まごころ

 今度の日曜日はゆめちゃんの小学校の運動会です。ゆめちゃんはかけっこが得意なので、運動会は楽しみでした。でも、最近のゆめちゃんは何か変です。

 お母さんがゆめちゃんにたずねました。

「ゆめちゃん、心配なことでもあるの?」

 ゆめちゃんは同じクラスのしげちゃんの事が気になっていました。

「運動会に仲間でやる競技があって、その仲間にしげちゃんって子がいるんだけど、しげちゃんは身体が弱くて、運動があまり出来ないの。」

「それで、私がしげちゃんを誘って、一緒に練習しようって言うんだけど、しげちゃんはなかなか練習してくれないの。」

 おかあさんはたずねました。

「しげちゃんは運動会のその競技をやりたいと思っているの?それともやりたくないと思っているの?」

「しげちゃんも、みんなと一緒にやりたいと思っているわ。」

「それじゃ練習すると思うのだけど、ひょっとしてゆめちゃんは、競技に勝つために練習しようって言っていない?」

「もしそうだと、ゆめちゃんのペースで練習しようとするから、しげちゃんは付いて行けないかもしれないね。」

「おやさまのお話に、お金持ちの人が作った最後のお餅を重箱に入れて持って来たら、おやさまは何にも仰らずにその辺に置いておいたけど、貧しい人がやっとお餅をつく事が出来たので、まずはお初をおやさまに差し上げようと持って来たら、おやさまは早速神様にお供えされて、およろこびになった、というお話があるの。おやさまはまごころがこもったものかどうか分かっておられたのね。」

「それと同じで、ゆめちゃんが勝つためではなく、しげちゃんが一緒に競技が出来るように、しげちゃんのペースに合わせて練習しようって言ったら、一緒に練習してくれるんじゃない。」

「分かった、やってみるね。」