まいた種通り

 ゆめちゃんの家には小さな畑があります。お母さんはその畑に、トマトやキュウリやナスなどの野菜を植えます。ゆめちゃんも時々、タネをまいたり水をかけたりしてお手伝いをします。

 「ゆめちゃん、この苗からどんな実が成るかわかる?」

 その苗は、春にゆめちゃんがまいた種が芽を出して大きくなった苗でした。ゆめちゃんは葉の形を見ても、トマトの苗なのかナスの苗なのか分かりません。

 でも、種をまく時にお母さんが、この種はゆめちゃんが好きなトマトの種なのよ、といったことを思い出しました。

 「トマトの実が成ると思うわ。」

 「そう、この苗はトマトの苗だからトマトが成るのよ。」

 「トマトの種をまけばトマトの苗が生えてきてトマトの実が成るの。キュウリの種をまけばキュウリの苗が生えてきてキュウリの実が成るのよ。」

 「種をまけばその種通りの実が成るのよ。」

 「私たちの暮らしも同じで、良いことを思って良いことをすれば、良い種をまいたのと同じで、良いことが返ってくるの。」

 「その逆で、悪いことを思って悪いことをすれば、悪い種をまいたのと同じで、悪いことを返ってくるのよ。」

 「でも、となりのおばあちゃんが言ってたけど、一生懸命やっているのに良いことなんか何にもないって、それに雑草は種をまかないのに生えてくるわ、それはどうしてなのお母さん。」

 「雑草は私たちが種をまかなくても、どこからか種が飛んできてまいたのと同じように生えるのよ。」

 「種は土に埋めないと芽が生えたり根が出たりしないの。土でかくさないとだめなの。だからコンクリートに種をまいても生えてこないのよ。」

 「私たち人間は、良いことはみんなに知ってもらおうとするけど、悪いことは隠そうとするでしょ、それは良い種はコンクリートにまいて、悪い種は土に埋めるようなものなの。」

 「だから、良いことをしてもなかなか芽生えないけど、悪いことをすれば芽生えるのよ。」

 「ふうん、そうなんだ。これからは良いことをしても自慢しないようにしよう。」