はたらく

 ゆめちゃんのお父さんのお仕事は電気屋さんです。

 家の中の配線の工事をしたり、故障した電気製品を修理したり、照明器具を取り付けたりします。

 日曜はお休みなのですが、時々仕事の時もあります。

 先週の日曜日は、ゆめちゃんはお父さんと遊園地に行く約束をしていました。ゆめちゃんは前の日は眠れませんでした。遊園地へ行ったらあれにも乗りたいこんな遊びをしたい、と考えてワクワクして朝になってしまったのです。

 日曜日は快晴で行楽日和でした。

 でも、突然お父さんがゆめちゃんに謝ったのです。

「ごめん、ゆめちゃん、お父さん仕事が入ってしまったから、遊園地に行けなくなってしまった。」

「遊園地は来週にしてもいいかい?」

 ゆめちゃんはふぐのように口をふくらませて、抗議しました。

「なんで、どうして、あんなに約束したのに。楽しみにしていたのに。」

「仕事は明日じゃ駄目なの?」

と、ゆめちゃんの気持ちはおさまりません。

 しかし、お父さんは仕事に行ってしまいました。

「お父さんとは口きいてあげない。」と、ゆめちゃんはストライキです。

 それを見ていたお母さんがゆめちゃんに言いました。

「昨夜一人暮らしのおばあちゃんから電話がきてね、電気が点かないので困っている、ご飯も食べれないし、テレビも見れないから、明日来て直して下さいと言うの。」

「お父さんはゆめちゃんとの約束があるので、最初は断ったのだけれど、ふとおやさまのお言葉を思い出したのね。はい、分りました、と返事をしたの。」

「おやさまのお言葉ってなあに?」

「それは、『働くというのは、はたはたの者を楽にするから、はたらくと言うのや。』という言葉なの。」

 仕事はお金をもらうためにするんじゃない、周りの人のために、周りの人に喜んでもらうためにするんだ。と言うのがお父さんの口癖でした。それを思い出したゆめちゃんは納得しました。